大判例

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大阪地方裁判所 昭和60年(ヨ)1870号

申請人

定塚卓三

右訴訟代理人弁護士

小林保夫

坂田宗彦

松尾直嗣

村松昭夫

芝原明夫

被申請人

大阪相互タクシー株式会社

右代表者代表取締役

多田清

主文

申請人の本件仮処分申請を却下する。

申請費用は申請人の負担とする。

理由

一  申請の趣旨及び理由は別紙のとおりである。

二  疎明資料によれば、次の事実が一応認められる。

(1)  被申請人はタクシー営業を目的とする株式会社であり、申請人は昭和五二年一一月被申請人に入社し、以来乗務員として勤務している者であるが、同五七年七月自交総連相互タクシー労働組合(以下、組合という。)が結成されてから現在まで組合執行委員長の地位にある。

(2)  被申請人は昭和六〇年五月六日申請人に対し、次の(一)ないし(三)記載の就業時間中の組合活動を理由に、懲戒処分として就業規則七四条八号(「職階の降等又は職種の変更をなす。」)に基づき、「同六〇年五月一三日から六日間、第一部第三課車庫整備係を命ずる。」旨の告示処分をした。(以下本件処分という。)

(一)  同六〇年五月四日午後三時半過ぎ、申請人は組合員六名を引き連れ、大阪本社工場内で、社長他十数名の作業員が作業中であることを知って、無断でドアを引きあけて工場内に乱入し、作業員の遮るのを押し切り、口々に「社長も団交に出て来い。安居常務では子供の使いだ。」と大声で何度も叫び続けたが、約一〇分間の後立ち去った。

なお、扉二枚には、一、就業中の組合活動は処分する。一、作業員以外は入場できない。と注意表示があるのに、申請人らはこれを無視して乱入した。

(二)  同六〇年二月二八日午後四時三五分頃、申請人は本社事務所玄関受付に組合員六名を引き連れて来て、「定塚の二月度給与の過怠金控除した賃金台帳を見せよ。」と口々に暴言を吐き、女子事務員を呼びつけるなど、いやがらせをやり、大声でわめきたてたが、上司に制されて立ち去った。

(三)  更に、同六〇年三月二八日午後四時三〇分頃、申請人は組合員四名を引き連れ、事務所玄関口の受付まで入り、大声で「反則減給の明細書を説明せよ。」と怒鳴りだしたので、安居常務は「その様な話は団交の時にするように。今は就業時間だから労組活動はやめるよう。」言うと、申請人らはなお一層大声でわめきだし、「だれも説明できる者はいない。」とすてぜりふを残して出て行った。

(3)  申請人は、本件処分が行われた場合には、昭和六〇年五月一三日から六日間タクシーに乗務できなくなり、その結果、五月分の得べかりし賃金は平均月額三二万円のところ約一〇万円の減額となる。

また、申請人の乗務員としての平常の勤務時間は、週二休制で毎日午後四時前から翌朝午前五時頃(拘束一二時間三〇分)までとなっており、そのうち二時間を休憩時間として随時とることができるところ、本件処分に基づく勤務時間は午前八時三〇分から午後五時三〇分まで、休憩時間は午後〇時から午後一時まで、午後二時三〇分から午後二時四〇分までとなる。

申請人は従前執行委員長として午後二時ないし午後三時頃から午後四時の出庫までの間、営業時間中、休憩時間、入庫後の午前四時から午前五時頃までの間に組合活動をしていた。

本件処分の期間である昭和六〇年五月一三日から同月一八日までの間において、組合の組織部会、執行委員会、組合員ないし組合と被申請人間の裁判についての打合せ等の予定が午前一〇時から午後四時までの時間帯に組まれている。

三  本件は懲戒処分としての職種変更処分の効力の停止という仮の地位を定める仮処分であり、その必要性は、権利関係が確定しないために生ずる申請人の著しい損害を避け、または、急迫な強暴を防ぐ必要がある場合に存するものである。

そこで、被保全権利の存否の判断はこれを暫時措くこととして、保全の必要性の存否について判断するに、右疎明された事実によれば、申請人は、本件処分により乗務ができないために、約一〇万円の賃金の減収を蒙り、経済的損失を受けることは否めない。しかしながら、本件処分により蒙る申請人の経済的損失については、後日本案訴訟において、本件処分の無効を前提として被申請人に対しこれを請求できるものであるところ、乗務員として日頃から水揚が多く、したがって賃金も高い申請人が、右の程度の一時的な減収により、生活に困窮し、本案判決を待っていては回復し難い損害を蒙るとは考え難く、また、これを疎明するに足りる資料もない。

次に、組合活動上の不利益については、前示の勤務時間等の関係からして、申請人は本件処分によりその組合活動にあたって相当程度の制約を受けることが窺われる。しかしながら、申請人の加入している組合は、一〇七名の被申請人従業員(乗務員のみ)で組織され、組合役員も定められて活発な活動をしている組合であることが疎明資料により一応認められるところ、申請人が本件処分により前示の予定された会議に出席できず、平常に比較して組合活動を十二分にできないとしても、右不利益は僅か六日間のことに過ぎず、その間、執行委員長としてなすべき職責は他の組合役員によって代替することができるし、また、申請人の勤務時間外に組合役員、組合員との連絡をとることもできるのであるから、右の組合活動状況、本件処分の期間、態様等に鑑みれば、本件処分が申請人の組合活動に著しい打撃を与え、回復困難な損害をもたらすとは言い難い。そして、他に本件仮処分の必要性を疎明するに足りる資料はない。

四  そうすると、申請人の本件仮処分申請は、被保全権利についてはともかくとして、保全の必要性についての疎明がなく、保証を立てさせて疎明に代えることも相当でないから、これを却下することとし、申請費用の負担について民訴法八九条を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 上原理子)

申請の趣旨

一、被申請人が、申請人に対してなした昭和六〇年五月六日付の告示処分(「五月一三日より六日間、第一部第三課車庫整備係を命ずる」)の効力は、これを停止する。

二、訴訟費用は、被申請人の負担とする。

との裁判を求める。

申請の理由

第一、当事者

一、申請人は昭和五二年一一月、被申請人相互タクシー株式会社(以下会社という)に入社し、以後現在まで乗務員として勤務し、昭和五七年七月自交総連大阪相互タクシー労働組合(以下組合という)が結成されてから、現在まで組合執行委員長として組合の中心的活動を行っているものである。

二、会社は、タクシー業を営む会社であり、所在地(略)に本社を、他に北、太融寺、平野町、宗右エ門町、江戸堀、豊中に各営業所を置き、運転手約七五〇名、営業用自動車約七五〇台を擁しており、社長多田清のワンマン会社である。

第二、経過並びに本件処分

一、会社の異常な組合敵視

組合は、昭和五七年七月二五日、本社の労働者らによって結成され、続いて同年一〇月三一日、豊中営業所に豊中支部が結成された。

これに対して会社は、組合の結成とその活動を憎悪し、組合の破壊・少数化・孤立化を狙って組合の結成・存在自体を否定し、度重なる団体交渉の申し入れをすべて否定し、会社に存した全自交労組(旧労組という)を脱退し、組合加入した組合員についても旧労組のための組合費の天引きを続ける等の他、日常的には宣伝妨害や組合の個々の組合員に対しても車の修理拒否等のいやがらせや差別的取扱い、暴行、不当処分の連発、さらには事実を捏造しての不当な解雇、脱退強要等々、まさにありとあらゆる手口による異常狂気の組合攻撃、不当労働行為を重ねた。

組合は、会社のこのような不当労働行為に対して裁判所、地労委、警察に対し、仮処分申請(四件)、不当労働行為救済申立(三件)、告訴(二件)を行い、処分無効仮処分決定一件、解雇無効仮処分決定二件、不当なチェックオフの差止を求める仮処分決定二件が大阪地裁よりそれぞれ発せられている。しかし、会社はチェックオフ決定を除きこれらの命令を一切無視し、引続き組合攻撃を強めてきている現状である。

二、引き続く不誠実団交

(1) 会社は、組合の存在を無視しつづけ、団交については大阪地労委命令(昭和五七年一一月一八日付)、中労委命令(昭和五八年一二月二一日付)にも拘らず、東京地方裁判所へ行政訴訟を提起(東京地裁昭和五九年(行ウ)第一三号事件)し、団交拒否をつづけた。緊急命令申立がなされる段階でやっと会社は組合と団交をすることになった。これは会社多田社長が、緊急命令と過料制裁をおそれたものに外ならない。

(2) ところが、団交に応じたものの、会社は組合を「分派労組」と呼ぶなど、組合敵視の姿勢をとりつづけ、今回迄一四回の団交を重ねながら、組合要求に対して、一切回答しないという不誠実団交を続けているのである。

三、組合は、昭和六〇年二月一三日の団交(第一三回)において、団交出席の組合役員に対し、団交当日の運賃収入の低下に対して反則金一、〇〇〇円(これは一定の水揚げに達しなかった場合に課せられる処分で、給与から控除される。)を課する旨の会社通告がなされたため、組合としては土曜日を団交日として希望したが、その結果約三ケ月会社から引き延ばされた上、昭和六〇年五月四日に開催にこぎつけた。組合要求に対する会社回答がなされる旨の事前折衝(五月二日)の上持たれた団交(第一四回)では、会社側は安居常務の他八名、組合側は申請人他一一名が出席した。組合側は会社回答を求めたところ、会社側安居常務は既に一年も前に提出してある要求に対し趣旨説明を求めるという団交引き延ばしを図った。

組合は、余りの不誠実な会社の態度に対し、会社社長の多田氏が全ての決定権をもち、ワンマンとして君臨していることから団交出席を要請することとしたのである。

四、組合は、申請人を中心に八名が、団交途中で席を立ち、多田清氏が会社工場内にある修理工場の一部で、越前大仏に関わる作業場にいたため、組合側は、申請人を先頭に、多田社長に対し、こもごも団交へ出席して欲しい旨の要望をなした。これに対し多田社長は「出て行け、就業中の組合活動はできん、処分するぞ」と怒鳴り、安居常務は社長に対し「只今団交中でございます。写真もちゃんと撮らせました。」と発言し、組合はやむを得ず、多田清氏への要請は打ち切ったのである。

五、それから会社は、翌日日曜日をはさんだ昭和六〇年五月六日、申請人に対しては、事実上乗務させないという「五月一三日より六日間、第一部第三課車庫整備係を命ずる」との処分(以下本件処分という)を、就業規則七四条八号を理由として告示するに至ったものである。

なお、処分理由として昭和六〇年二月二八日及び三月二八日の件を付け加えているが、これはリース制にもとづく会社の給与計算の過程(原価計算と利益分配と題する表でわかる)が不明であるから、その説明を会社経理にたずねたにすぎないものであり、会社は組合結成以来、給与計算過程については一切労働者に明らかにしていないのである。そして組合結成以降、申請人はこの計算過程を個々の労働者に説明するよう度々会社経理にたずねており、今まで問題にもされなかったものを、今回つけ加えてきたものであり、直接の契機となった団交出席要請のみでは処分ができなかったことを示すものである。

六、以上のように、本件処分は、会社による異常な組合敵視による組合執行委員長である申請人に対する不当労働行為によるものであり、処分権限を濫用したものといわざるをえず民法第九〇条に反した無効のものであり、その効果は停止されるべきである。

第三、被保全権利

本件処分により、申請人は労働者が出払った後に、会社車庫においてペンキ塗り作業や、清掃作業を一日中やらされ、他の人が近づくことを禁じられる状態に置かれ、実質的には他の組合員や労働者から隔離されたことになり、会社と対等の組合執行委員長として、休憩時間などに会社労働者、組合役員との接触を行うことができず、組合活動は著しい制限をうけ、組合役員として執行ができないなど、組合員の団結権行使の権利が奪われるものとなり、更に、乗務できないため月間水揚げは低下して、五月分賃金は約一〇万円低下して、賃金は三分の二にダウンすることになる。

以上のように、申請人は被保全権利として、組合としての組合活動の団結権行使及び賃金請求権を有している。

第四、保全の必要性について

(一) 前記のとおり、会社が強行しようとしている本件処分は、これまで被申請人が次々に行ってきた違法な処分のうちでも、その違法性は極めて高いものである。そして、右違法性の程度は当然本件の保全の必要性にも影響を与えるものである。すなわち、違法性が高くなければなるほどそれによって被る申請人への打撃は精神的な損害も含めて大きくなるわけであり、これを事前に差し止める必要性、緊急性はそれだけ増すものである。

(二) ところで、本件違法処分は以下に述べる通り、経済的な損害を受けるだけでなく、申請人の組合委員長としての組合活動に大きな打撃を与えるものである。

申請人が委員長をしている自交総連大阪相互タクシー労働組合(以下本件組合と言う)は、昭和五十七年七月末に結成されたものであるが、被申請人は当初右組合結成を認めず、大阪地方労働委員会及び中央労働委員会の各団体交渉命令が出るに及んでやっと右組合を認めたのである。ところがその後一年余りがたっても被申請人は本件組合との団体交渉を誠実に行なわず、組合が提出した五十項目にのぼる要求項目に何一つも回答しないでいる状態である。

更に被申請人は不当解雇をはじめ様々な違法不当処分の連発や不当労働行為を強行してきている状態でもある。従って、現時点における本件組合の委員長としての活動は単に通常の場合における以上にその重要性は大きいものがある。

ところが、本件処分が強行されれば申請人は一週間に渡り会社の車庫内に隔離され他の組合員や従業員らと交わることを一切禁止されると言う状態となるのである。それ故申請人は委員長として通常業務に影響のない程度で行っている他の組合役員との連絡や組合員との連絡が全く出来なくなるのである。従って、申請人の組合委員長としての活動は極めて制約されることは明らかであり、これによって、申請人ばかりでなく本件組合の受ける損害も計りしれないものである。

(三) 次に申請人の受ける経済的損害も無視できないものがある。

すなわち、本件処分によって申請人はタクシー乗務が出来なくなりそのため給料は通常約三十二万円であるのが約十万円の減となるのである。その上申請人は本来土曜日の精励休暇を取ることができるのにこれがとれなくなり、土曜日出勤を強制されるという不利益もうけることになる。

又、被申請人は口頭ではあるが申請人の本件処分後更に本件組合の組合員に対する大量処分さえにおわしている。すでに申請人以外にも十名に第一回の処分として新車台替をさせないという処分を行っているのである。

(四) 以上の通り本件違法処分によって申請人の受ける不利益は極めて重大であり、その救済の必要性、緊急性が高いことも明らかである。

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